東洋医学の治療は2通りある。1つは薬(生薬)を使う方法。もう1つが鍼や灸、マッサージや按摩など、からだの外側から物理的な刺激を与えて治療する方法である。鍼灸治療では、ツボ(経穴)を刺激して、経絡にはたらきかけ、臓腑や気・血などの変調を整えて、正常なからだへと戻していく。
鍼治療は、非常に細い金属の鍼(針)をツボに刺して刺激を与える。鍼(はり)には体の中へ金属のはりを刺入する毫鍼が一般的であるが、鍉鍼(ていしん)という刺さない鍼もあり希望に応じて選択することもできる。小児には小児鍼といって鍉鍼同様に刺さない施術を行うことが多い。
鍼の種類も治療の目的によって使い分ける。鍼を刺したら痛そうだし、もぐさに火をつけたら熱そうだ。ところが実際には、不愉快な痛さや熱さを感じることはない。何かしらの感覚はあるが、鍼でも灸でも心地よい刺激となって伝わる。
どのような症状の時に鍼を使うか灸を使うかという明確な区別はないが、灸は熱を加えるので、冷えからくる症状が強い人には灸が効果的と言える。
日本で鍼灸の治療をする場合には、はり師、きゅう師の国家資格が必要である。原則的には健康保険適応外であるが、保険適応症疾患は医師の同意書があれば健康保険適応となる。
鍼灸治療は、最初のうちは2~3日に1度ずつ行われることが多い。治療期間は症状によるが、慢性のものほど長くかかる傾向がある。始めて治療を受けた直後は、だるさや熱っぽさを感じることがまれにあるが翌日には解消している。2度目以降はからだが慣れてきてそのようなことはないが、続くことがあれば報告するようにしてください。治療した日は飲酒や入浴は避けた方が良い。せっかく調節したバランスが失われる可能性があるからだ。
なお、スポーツ鍼灸は、厳密には東洋医学の鍼灸とは異なり、捻挫や骨折、筋肉の疲労など、外傷からくる痛みを和らげることを主な目的としている。しかし最近では、体調管理、スポーツ障害の予防、疲労回復などを目的に東洋医学的な視点からの取り組みも行われるようになってきている。